前立腺肥大症
① どんな病気か?どんな症状あるか?
前立腺肥大症は、膀胱の下、尿道との間にある臓器で男性にしかありません。
中に尿道(前立腺部尿道)が通っているため増大すると尿道を圧迫し排尿障害を認めることがあります。これが前立腺肥大症です。
ポイントは、前立腺肥大は加齢に伴う現象ですべて検査や治療が必要というわけでありません。
症状がある場合は、検査などが必要となります。
前立腺肥大症の症状
前立腺肥大症は、以下のような症状が現れます。
- 残尿感・・・尿が膀胱に残っているような感じ
- 頻尿・・・・さっきトイレに行ったばかりなのに、またすぐトイレに行きたくなる
- 夜間頻尿・・夜もたびたびトイレに通う(夜間1回までは許容範囲、2回以上は多いとされています)
- 尿の勢いが弱い・排尿困難・・・尿の勢いが弱い
- 切迫性尿失禁・・・急に漏れそうになるほどおしっこがしたくなる
- 腹圧排尿・・・力を入れないとおしっこが出ない、出るまで時間がかる
原因は男性ホルモンと加齢
はっきりとした原因はまだ分かっていませんが、男性ホルモンであるテストステロンの影響や加齢、食生活の欧米化が前立腺肥大症と関わりがあると言われています。
日頃の食生活は大事ですが、いきなり食生活を変化させて前立腺肥大が収まるといったものではありません。
② 前立腺肥大症 どんな検査が必要か?なぜ、その検査を行うのか?
前立腺肥大症に必要な主な検査は、下記の通りです。
- ① IPSS質問票、問診
- ② 尿流量測定検査(ウロフロメトリー検査)
- ③ 残尿測定検査
- ④ 超音波検査(エコー検査)
- ⑤ 腫瘍マーカー測定(血液検査)
などです。
なぜ、その検査が必要なのかは各項目をクリックしてみてください。
① 問診、IPSS質問票、問診
前立腺が年齢ともに増大することは、一つの加齢現象です。
よって大きくなることが問題ではありません。
前立腺肥大症とは、前立腺サイズが増大し排尿障害を起こすことです。よって症状があるかないかは、非常に重要です。
前立腺肥大症の症状の診断基準としてI-PSSスコアが用いられます。
排尿症状が気になる方はぜひ、下記の質問票を試してみてください。
下記の質問表で高い点数が出た方は一度ご相談にご来院ください。
(0~8点:軽症、9~19点:中程度、20点~:重症とされています)
IPSS問診票
② 尿流量測定検査(ウロフロメトリー検査)
次に、症状がある場合、排尿障害の程度を客観的に評価します。
まず、重要なのは尿の勢いです。これは尿流量測定検査(ウロフロメトリー検査)といいます。
単純に専用の便座で排尿していただくと、尿の勢いが測定されます。
上記は、青が正常、赤が典型的な前立腺肥大症の患者さんの尿の勢いです。
横軸が時間、縦軸が尿の勢いです(ml/秒)。
非常に勢いが弱く、時間もかかっています。
このように尿の勢いが低下した場合の原因のひとつが前立腺肥大症です。
注意点は、それ以外の病気もあるということです。
たとえば、神経因性膀胱といって神経の障害で排尿障害をきたす場合もあります。
いずれにしても尿勢が低下している場合、更なる検査が必要です。
③ 残尿測定検査
残尿測定検査を行います。
患者さんが感じている残尿感はあまりあてにならないことがあります。
残っていると思っていてもないこともありますし、逆に症状がない患者さんでも残尿を測定すると意外に多いこともあります。
客観的評価のため残尿測定検査を行います。
ブラッダースキャンシステム
このような機器を、排尿後に下腹部、恥骨の上にあてて測定します。
約5秒前後で結果がでます。痛みはもちろんありません。
これによってどのくらい膀胱に尿が残っているのかわかります。
残尿量 | |
---|---|
正常 | 50ml未満 |
やや多い | 50-100ml |
多い | 100ml以上 |
50ml以上あると、異常の範囲となります。
ただし、検査は誤差もあり、あまりたまっていないときにすると通常、問題ない患者さんも50ml以上となることもあります。
普通に排尿して、50ml以上の残尿を認める場合は注意が必要です。
残尿が増える疾患もいろいろあります。多い場合は、更なる精査が必要です。
④ 超音波検査(エコー検査)
前立腺の大きさを評価するのに超音波検査を施行します。
超音波検査は、おなかからエコーのプローベをあてて観察します。
前立腺のサイズだけでなく、腎臓もチェックします。
重度の前立腺肥大症では、排尿障害で残尿が多くたまり高圧でのはいにょうとなるため水腎症といって、腎盂や尿管に尿がたまって拡張してしまうことがあります。
前立腺肥大症は、悪化すると腎臓にも影響することがあります。むくみの原因などになることもあります。
超音波検査は、痛みはありません。皮膚からエコーゼリーをつけてプローベをあてますので、少しつめたいことやくすぐったいことがあります。
⑤ PSA検査
PSAは、前立腺がんの腫瘍マーカーです。
基本、前立腺肥大症と前立腺がんは直接的な関連はありません。
しかし、排尿障害が前立腺がんから起こることもあります。
よって年齢によりますが、必要に応じてPSA採血検査を行います。当院では、PSA検査結果を当日確認できます。
③ 前立腺肥大症の治療について
前立腺肥大症の治療は、主に薬による治療と手術によるものにわかれます。
① 内服治療
内服薬にはいくつか種類があります。
- 前立腺の緊張を緩める薬(αブロッカー薬)
- 前立腺のサイズを小さくする薬(5α還元酵素阻害薬)
- 前立腺及び膀胱平滑筋弛緩作用により排尿を改善する薬(PDE5阻害薬)
- 漢方薬
- 過活動膀胱(頻尿)のお薬
② 手術療法
- レーザー手術
- TUR手術
- ウロリフト
内服に関しては、症状によって薬を組み合わせたりします。
内服薬でも排尿障害が強い方や尿閉(尿が詰まってします患者さん)は手術の適応があります。
最近では、様々なレーザー治療やウロリフトといった治療選択肢もあり、適宜ご案内させていただきます。
排尿でお困りの方はご相談ください
普段、排尿でお困りの方、年齢だからとあきらめていませんか。
治療によりQOLが改善することも多いです。
トイレのために旅行ができない、車・バスに長時間乗れない、仕事に支障がある方は、ぜひ、ご相談ください。
当院で検査、内服治療が可能です。