前立腺がん
- ① 限局性前立腺がん(中に留まる前立腺がん)
- ② 転移性前立腺がん(転移がある前立腺がん)
- ③ 去勢抵抗性前立腺がん(ホルモン治療後にPSA上昇を認める抵抗性のがん)
- ④ 前立腺がん患者さん治療後のED
- ⑤ 前立腺がん患者さん治療後の不安
① 限局性前立腺がん(中に留まる前立腺がん)
- Q1)限局性前立腺がんのリスク分類について教えて?何でリスク分類するの?
- Q2)リスク分類って本当に正しいの?リスク分類の落とし穴
- Q3)限局性前立腺がんにはどんな治療法があるの?
- Q4)前立腺がんの手術ってどんな方法、リスクがあるの?ロボット支援下手術、開腹手術で違いがあるの?
- Q5)手術後のED(勃起不全)について、神経温存手技って何?
② 転移性前立腺がん(転移がある前立腺がん)
① 前立腺がんの転移はどこに多い?転移診断方法は?
前立腺がんは転移する場合どこに多いでしょうか?
多いのは、骨、周囲のリンパ節、肺、肝臓などです。
がんの転移の流れは大きく分けて、血液にのって起こる血行性転移とリンパの流れによって起こるリンパ行性転移があります。前立腺からのがん細胞がこうした流れに乗って広がり転移部位で生着することで転移が発生します。
転移検査はどのような検査をおこなうでしょうか?
リンパ節転移や肺転移・肝転移などはCT検査で評価することが多いです。
また、骨転移は骨シンチグラフィー検査といってテクネシウムといった放射線同位元素を注射して数時間後、撮影を行うことで評価が可能です。
放射線同位元素といっても、数時間で体内から排出されるため体に問題はありませんのでご安心ください。
また、最近では全身MRI(Whole body MRI: DWIBS)といった検査が施行される場合もあります。
これは全身のMRI検査で、小さい転移巣などの検索にも有用です。
ただし、検査時間がかかり長時間の安静が必要など検査の負担もあるため必ず転移巣検索、評価に必要な検査ではありません。
② PSMA-PET検査ってどんな検査?
PSMA-PET検査という、核医学検査があります。
どんな検査でしょうか?
前立腺特異膜抗原(PSMA: Prostate Specific Membrane Antigen)は、前立腺細胞の表面に存在するタンパク質です。
正常の前立腺細胞に存在していますが、前立腺がんになると、その数が増え特に、がんの悪性度が高い場合や転移や再発をした前立腺がん細胞の表面では、PSMAは正常な前立腺細胞に比べて10〜100倍もの量が出現していることが知られています。
この性質を利用して、前立腺がんの早期の転移部位診断や進行がん治療への応用が世界で始まっています。
日本において、保険診療でPSMA-PET検査はできるのでしょうか?
残念ながら2022年8月現在、答えは×です。
一部の施設で臨床研究として行われている場合があります。
海外での検査は可能で、こうした施設を仲介する会社があります。
検査を希望する場合、ご相談ください。
PSMAは診断だけでなく、治療にも応用されています。
海外においてルテシウム177といった放射線物質をこのPMSAにつけ、患部にその物資を運び治療を行う第3相臨床試験が行われ、がんの進行および全生存期間をこの治療を行った群で有意に改善したとする結果が報告されています。(N Engl J Med. 2021 16;385(12):1091-110)
近い将来、こうした検査、治療が日本で行われることを期待します。
③ 転移性前立腺がんの治療は?
転移性前立腺がんの治療はどのように行われるでしょうか?
前立腺がんの進行には、男性ホルモン(テストステロン)が関係します。
よって、この男性ホルモンを抑えることによりがんの進行を抑えることができます。
そのためにホルモン治療を行います。
ホルモン治療には下記のような種類があります。
- ① 注射剤
LHRHアゴニスト (リュープリン®、ゾラデックス®)
LHRHアンタゴニスト(ゴナックス®) - ② 内服薬
抗男性ホルモン剤 (カソデックス®・ビカルタミド®、オダイン®等)
ARAT剤(イクスタンジ®、アーリーダ®、ザイティガ®等) - ③ 抗がん剤
ドセタキセル(タキソテール®)
などがあります。
どのように使用するか、副作用があるかは、よくご相談ください。
③ 去勢抵抗性前立腺がん(ホルモン治療後にPSA上昇を認める抵抗性のがん)
去勢抵抗性前立腺がんとは?
去勢抵抗性前立腺(CRPC)がんとはどんながんでしょうか。
以前は、ホルモン抵抗性前立腺がんとも言われておりましたが、前立腺がんホルモン治療中、男性ホルモンが去勢状態であるのにPSAが上昇する状態を指します。
多くは転移性の去勢抵抗性前立腺がんですが、手術・放射線治療後のPSA再発後に、ホルモン治療が行われる場合では、画像上転移がないのにPSAが上昇する場合があります。
これをm0CRPC(転移がない去勢抵抗性前立腺がん)といいます。
抗がん剤などの薬剤を使用しますが、転移があるなしでもその適応がかわることがあります。
また、最近では、遺伝子変異に基づいた治療選択もこの去勢抵抗性前立腺がんでは保険診療で一部、可能となってきています。
一度だけですが、遺伝子検査を行うことが出来る場合があります。
BRCAといった遺伝子変異がある場合、去勢抵抗性前立腺がんではリムパーザ®といった薬剤の使用が可能です。
ただし、遺伝子検査を行うには、患者さんやその家族を含めその必要性、リスク等をよく理解する必要性がありますので、検査可能な施設でよくご相談ください。